ぴよすけです。
今回の記事は沖縄戦の記憶を題材にした、目取真俊さんの小説「ブラジルおじいの酒」についての簡単なあらすじと感想です。
目取真俊さんは芥川賞を受賞されたということもあり、読み終えたあともいろいろと考えさせられる作品になっています。
作家・作品データ
まず「ブラジルおじいの酒」についての簡単なデータを示しておきます。
発表:1999年(朝日新聞社)
作者の目取真俊さんは1997年に発表した『水滴』で芥川賞を受賞されました。
沖縄県出身ということで、沖縄の風土や歴史、特に沖縄戦について触れる作品をいくつも発表されています。
今回の「ブラジルおじいの酒」は『魂込め(まぶいぐみ)』や『目取真俊短篇小説選集』の「赤い椰子の葉」という短編小説集に収められています。
小説だけではなく、沖縄の地元新聞社に評論やエッセイ等も寄稿しているそうです。

簡単なあらすじ
物語は舞台は翌年に沖縄返還を控えた1971年の初夏。
小学校の4年生である「ぼく(=主人公)」と、近所に住むちょっと風変わりな老人である通称「ブラジルおじい」とのお話です。
ぼくはひょんなことから村に住むブラジルおじいと関わるようになりました。
おじいはぼくにいろいろな話を聞かせてくれます。
遠いブラジルの農場で起きた「神懸かり者(かみがかりやー)」の話。
蝶は人の魂がこの世に現れるときの姿である話。
おじいの大切にしている酒と家族の話。
ぼくはおじいとのかかわりの中で、おじいの生き方を知っていくのでした。
感想と作品のポイント
短編の部類に入るので、おそらく40~50分前後で読める作品です。
直截的に「戦争」が出てくるわけではありませんが、やはり戦争を題材にした作品であると感じることでしょう。
沖縄返還を目前に控えた時代に、おじいの生い立ちにかかわる昔話の場面などから沖縄戦の記憶を背負って生きている姿が想像できました。

沖縄での言い回しが随所に見られ、登場人物たちの集落での描写も細かく、読んでいて頭の中にイメージがしやすい作品です。
また、1970年代という時代をあまり感じさせない(2020年に読んでも違和感がない)ところもあり、読みやすい作品でもあります。
ぼくの視点で描かれている一人称小説で、全体的にセリフが少なく、おじいと父親が生きて再び会うという約束をする際の「忘るなよ(わしるなよ)」という言葉に重みが込められていました。
作家である目取真さんの文体がこのような特徴を持っているのかもしれませんが、文章のいたるところに「考えさせるキーワード」が散りばめられており、読んだ後にいろいろと考えさせられます。
このあらすじでは触れることができないほど、意味ありげな描写がたくさんあります。
以下がぴよすけが気になった部分です。
・描写が具体的な製糖工場
・神懸かり者の昔話
・蝶の細かい描写、蝶が死んだ人の魂であるということ
・様々な場面に出てくる色の意味

細かい描写に意味があると感じました
作者である目取真氏は、一つ一つに何らかの意味を持たせて小説を書いていると思われます。
(おそらく読むとほとんどの人がこれらの部分に何らかの引っ掛かり=謎を持つようになると思うくらい、ハッキリと描写されています)
この作品のタイトルにもある「おじいの酒」の正体についての考察はこちらからどうぞ!
ぴよすけです。目取真俊さんの作品『ブラジルおじいの酒』に登場する「おじいの酒」が表す意味についての考察です。 『ブラジルおじいの酒』は象徴的なものが多く描かれており、いわゆるテクスト読み(読み手側が自由に解[…]
登場する甕に入った泡盛のように、読んだ後も時間をかけて長く味わえる作品です。
よろしければご一読ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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