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住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』解説:青春小説の行間を読む!

ぴよすけです。

今回は住野よるさんの『か「」く「」し「」ご「」と「』について、ネタバレ全開で語っています。

青春小説として甘酸っぱい感じが残るこの作品、高校生から大人まで楽しめます。

 

登場する人物を中心に紹介し、住野さんらしい仕掛けも解説しています。

 

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はじめに

本記事は『か「」く「」し「」ご「」と「』の紹介・考察記事となっています。
重大なネタバレを含んでおりますのでご注意ください。
なお、考察内容等はあくまでぴよすけの個人的な見解となります。

本記事の引用は『か「」く「」し「」ご「」と「』住野よる(2017年3月・新潮社)に拠っています。
引用部分の( )はページ数を示しています。

作品データ

作品データ著者:住野よる
刊行:2017年3月(新潮社)
住野よるさん4作品目の長編青春小説

5章構成で、5人それぞれの視点から物語が進行していきます。

舞台は高校3年生のとあるクラス、2人の男の子と3人の女の子が繰り広げる「日常」が描かれています。

 

大きな謎解きのようなテーマがあるわけではなく、恋愛、友情、進路など高校生が悩める日々をなんとか乗り越えようとする姿が描かれています。

大人になっていない年齢ならではの不器用さ・ひたむきさが、住野さんらしい書きぶりで表現されています。

275ページありますが、1人ずつの区切りで読んでもサクッと読み進めることができる青春小説です。

 

特徴的なのは、5人それぞれに人がどう思っているかを知る「能力」があるということ。

「他人の感情がわかる」「この人が他の人をどう思っているか」などを、記号や矢印を用いて表しています。

 

『か「」く「」し「」ご「」と「』の「」部分に、その章でメインとなるキャラクターが見える記号や矢印が入ります。

 タイトルと章タイトルの比較

タイトル:か「」く「」し「」ご「」と「


京:か、く。し!ご?と

エル:か↓く←し↑ご→と

 

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5人の少年少女たち

出典:[新潮社]住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』PVより

 

京くん

地味な自分に引け目を感じている。
気になるのに言い出せないことも。

第1章のメインキャラです。

 

初めて読んだ人はおそらく第1章の途中まで「大塚君=ヅカ」と勘違いします。

実は大塚君とは京のことを指します。

「ヅカに、いや、大塚くんに伝え……といて。そんなんじゃ女の子も逃げるよって」

(p27)


「中学の頃は美形の女の子みたいな顔してて、男だけど宝塚入れるんじゃないのって言って、んで、ヅカ。本名、高崎博文なのにね、ははっ」

(p55)

 

こういう「読み手にハッとさせる伏線」は住野さんらしいという感じがします。

『この気持ちもいつか忘れる』でも同じようなパターンがありました。

 

ミッキーのことが好きなんですが、自分に自信が持てない京くんはウジウジしてしまうんです。

高校生あるあるだなぁ!

 

しかし最後まで読み進めると、実はミッキーも京のことが好きだったということが明らかになります。

くぅ~、キュンキュンします!

 

ミッキー

ヒロインよりヒーローになりたい。
必殺技は飛び蹴り。

京が想いを寄せる第2章のメインキャラ。

 

先頭から読み進めた第2章では彼女の性格的な部分が多く描かれています。

まさにヒロインよりヒーローになりたい女子生徒という感じでしょう。

友達想い、ポジティブ、飛び蹴りなど明るい女の子です。

 

個人的には「人の心はこじ開ける」という考えが好きです。

勢いがあり、やや強引な印象を持つのかも…

作品後半まで読んでいくと、彼女の中学時代と今の気持ちがはっきりと描き出されていきます。

 

明るく前向き、運動もできる彼女はまさにクラスの中心人物といっても過言ではありません。

むしろ出来すぎているぶん、他の4人よりも感情移入がしづらいような印象も。(これはヅカも感じました)

どちらかというと影があったり、不完全だったりしたほうが読み手としては面白いですからね…

 

しかし、読破した後にもう一度読み返すと、仲間想いの彼女の人柄の良さや考え方に惹き込まれるはずです!

 

パラ

パッパラパーで予測不能。
ふざけているようで実は本気?

第3章のメインキャラ。

 

個人的にはパラの立ち位置ってカッコイイし好きだなぁと思えます。

不思議系だけどきちんと見通したり考えたりしているあたりがミステリアス。

強さもあり、弱さもあり、観察眼もあり…こういう人って憧れます。

第2章ではノーブラ疑惑が

人気投票で1位を獲得するのも納得です。

また、第5章のタイムカプセルに入れるエルからパラへの手紙に以下のような一文が添えられています。

これは私だけが知っていることだろうけど、自分の心を押し込めてまで好きな人の幸せを願うパラの幸せを、私も心から願っています。

(p.239)

 

人を好きな気持ちがわかる能力を持つエルがこのように言っているので、この部分を解釈すると、

・パラは京のことが好きだった

・パラはミッキーのことが好きだった

という2つが考えられます…

 

ヅカ

体育会系で明るい長身の「王子様」。
皆に好かれるクラスの人気者。

第4章のメインキャラ。

 

他の章ではことあるごとにランニングしているイメージのある男の子。笑

本名は「高崎博文」。読者は彼の名字を「大塚」と勘違いします。

 

実は中学校のころミッキーと付き合っていました。

高校生になった今はミッキーをよき友人と思っており、現在はおそらくですがエルに恋心を抱いています

以下は第3章での出来事。

笑顔の素敵な王子様の心臓も、そのリズムを速めたのだ。つまりその胸の鈴は、重要な意味のあるものだということだ。
わたしは、彼の口から事実を引きずり出す。
「鈴、どうしたの?」
「え……いや」

(p.110)

さらに第3章終盤にて。

「三木ちゃん、王子様って宮里ちゃんのことなんて呼んでるっけ?」
「ん? エルじゃない?」
そっか、そういうことか。
初日の朝、私は彼に訊いた。
『鈴、どうしたの?』
その時、彼は言い淀んだように見えた。
でも違ったんだ。あれは、口を滑らせていたんだな。

(p.158)

鈴を渡す相手はエルだったことが読み取れます。

 

そして第4章終わり部分。

「次は、勘違いじゃねえよ」(p.214)

とあることから、自分の気持ちに素直になって行動していくことが暗示されています。
(ただ、エルとのことが進展したというシーンはありません…)

 

エル

内気で控えめ。
裁縫が得意。
ある日突然、不登校に。

第5章のメインキャラ。

 

京と同じような考え方をし、京の気持ちに理解がある優しい子。

第4章くらいまではパラに次ぐ不思議系キャラな感じがしましたが、第5章では理路整然とした考えがあり、きちんと行動に理由があることに感動。

ただパンチが弱く、良い人で終わってしまいそうな可憐なイメージがあります。

 

人が誰を想うかが矢印になってわかる能力を持っています。

恋愛視点で考えると結構大切な能力をお持ちなんです。

が、実際に自分に向いている矢印はまだ見れていないようで…

 

ちなみに第5章で作品タイトルにもなっている「かくしごと」という言葉が登場します。

私達はひとりひとり性格も好みも考え方もまるで違うように、ひとりひとりにそれぞれ別の役割があるんじゃないかって。
それぞれが、各仕事を与えられて、そうやって皆が支え合っているんじゃないかって思い始めました。

(p.267)

第4章まではタイトルに「かくしごと=隠しごと」という意味があると考えていましたが、第5章にて「かくしごと=各仕事」という人の持つ「役割」もあるということが書かれています。

 

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5人いれば5人の見方・考え方が

本作品の「能力」は特殊なチカラみたいな感じですね。

我々も人と接するときに表情や空気、所作を読むため、他人がどう感じるか・どんな気持ちなのかという感受性を「能力」として表しているのではないでしょうか。

 

しかし感受性は人それぞれ違いますし、読んだ後に「自分がどう行動するか」は自分の性格・考え方によっても様々です。

たとえば目の前で不機嫌そうな人がいたとしても、声を掛ける人・ほっとく人・逃げ出す人…みたいに。

人にとっては小さな悩みでも、自分にとっては大きな悩みであったり…考えてなさそうだったとしても実はしっかり考えていたり…

 

そんなことをお互い考えていながらも、人との触れ合いでは些細なことからすれ違いが起き、仲直りし、また絆を深めていく。

この物語はそういった高校生の日常が収められています。

 

かつて高校生だった大人が読んでも、今様々な悩みにぶつかっている高校生が読んでも、自分らしく生きるとはどういうことなのかのヒントが得られるのではないでしょうか。

 

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プロロオグ・エピロオグの会話の主は?

この作品のはじめとおわりには「プロロオグ」「エピロオグ」(プロローグ・エピローグ)が収められています。

プロローグ・エピローグとは?
いわゆるプロローグ・エピローグで、プロローグは作品の意図や展開などを暗示する導入部、エピローグは物語の終わりを示し、中には補足的な役割を持つものもあります。

 

さて、この「プロロオグ」と「エピロオグ」は会話形式で書かれていますが、誰の会話なのかパッと目を通しただけではわからないようになっています。

 

読み終わった自分が予想するとしたら、おそらく京とミッキーではないでしょうか。

理由としては、二人の想いが通じ合ったあと、のような言い回しが出てきます。

また、鸚鵡返しのような部分をヅカやパラが言う感じには想像できませんし…

 

ちなみにこのエピロオグの最後が『』で終わっています。

「あのね」
「うん」
「ええと、うち、来る?」

(p.275)

この最後の部分は「読み手のあなたが想像してね」的なことなのかなぁと思いました…

隠されたセリフですよー、想像してみてください!…みたいな?

もっと深い意味がありそうな感じです。

 

タイトルも『か「」く「」し「」ご「」と「』という具合に、最後の部分が「になってますし…

 

この部分の会話が誰が言いそうな言葉なのかを考えて読むことも、この作品のおもしろさですね。

 

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高校生にオススメの本

能力については、いわゆる「ガチな能力者」というわけではありません。

先述のとおり、我々の日常でも「表情を読む」「所作から気分を読み取る」などしていることを、小説という読み物に落とし込んだときに「記号」「矢印」などで表しているのだと感じました。

 

人の思い(想い)がわかることが他人と繋がる最短ルートに見えますが、人の気持ちほどわからないものはありません。

今はネットが発達したため、一昔ほどきちんと他人と面と向かって関わることが減っていると思います。

 

この時代を生きる高校生に、ぜひ一度読んでほしい作品だと感じました。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
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