日常生活の中で人間は自分の体を使い続けるため、どうしてもケガの心配がついてまわります。
スポーツ選手だけでなく運動と関わりが少ない人でも、ケガの予防はもちろん、ケガが発生した時の対処法は知っておくべきです。


痛みが出たりケガをすると、案外どう行動していいかわからなくなってしまいます。
実はきちんとした対処をすれば、ケガの治りが早くなる場合もあるんですよ。
この記事ではケガをしたあとの応急処置についてまとめています。
特に日常生活の中で起きやすい捻挫や突き指をした時の参考になればと思います。
応急処置の基本は素早く対処すること
応急処置とは、外傷などのケガが発生した場合、その場でできる限りの対処を行うことを指します。
ケガが発生して、放置しておいても回復が遅れるだけです。
正しい対処をすばやく行うことで、ケガの早期回復が望める場合もあります。
痛みを感じたり、傷ができたりした場合には素早く対処しましょう。
熱中症や意識混濁などのケースでは「下手に動かさないほうがよい」という場合もありますので、ご注意ください。
対処の基本は「RICE」
応急処置ではRICEという言葉を覚えておきましょう。
この「RICE」とは、ケガの発生時にとる基本的な処置「Rest(安静)」「Ice(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(高挙)」の4つの頭文字からきています。
① Rest(安静にする)
② Ice(冷却する)
③ Compression(圧迫する)
④ Elevation(高く挙げる)
処置はこの順で行うため、4つをバラバラで覚えるよりもRICEで覚えましょう。
Rest(休息)
文字通り、体を休ませることです。
腫れや出血を最小限に抑えることと、ケガをしたまま動くことによる二次的な外傷を防ぐ意味があります。
例えば運動時に足首を捻挫をした場合、足首の靭帯周辺の毛細血管や細胞が破壊されてしまいます。
そのまま動き続けてしまうと、損傷した部分を中心にケガがさらに悪化してしまう可能性があるので、すぐに運動を中断し、体を休めましょう。
日常生活の中のケガは、すぐに休めば問題ありません。
しかしスポーツではこのRestを実践するために指導者と選手の意思疎通や日頃の指導が重要となってきます。
選手たちは大事な場面ほど、特に部活動中に大事な練習であったり、試合中だったりするとなかなか痛みを訴えることができなかったり、申し出なかったりする状況があります。
精神論的に「痛みがあるけど試合で興奮していて、この試合だけは出場したい」という考えや「大事な試合でチームメイトに迷惑をかけてしまうくらいなら多少の痛みがあっても大丈夫」という考えは非常に危険です。
現代のジュニアスポーツでは、子どもたちが生涯にわたりスポーツに親しむために行われるべきものになっています。
一時のケガで済むことも多いですが、処置や判断を間違えることで今後の生活に支障が出る状況も十分に考えられます。
「子どもが大丈夫と言っているんだから大丈夫」では通用しません。
子どもの気持ちに寄り添いつつも、指導者がケガに対して適切な処置・対応をすることが求められます。
Ice(冷却)
患部を冷却し、内出血や腫れを最小限に抑える処置です。
冷却することで、血流を抑えつつ、周辺組織への影響を少なくする(温度を下げて細胞の新陳代謝を落としつつ、周辺の正常な細胞が低酸素症になって破壊されるのを防ぐ)ことになります。
突き指などをしてしまった場合、水道水で冷やしますが、Iceの処置と同じ原理です。
冷却に用いるものは何がよい?
アイシングを効果的に行うには氷をビニール袋や氷嚢に入れて患部に当てます。
場合によってはタオルや薄い布などの上から冷やしましょう。
コールドスプレーは個人的にはあまりオススメできません。
なぜなら、効果的なアイシングをする場合にはそれなりに時間をかけて患部を冷やすことになるからです。
コールドスプレーを用いた場合、あくまで表面の皮膚は冷たさを感じますが、内部の損傷した部分まで冷却するにはパワー不足となります。
また、患部を冷やすには10分以上冷やすことが大事になります。
コールドスプレー1本でそれだけ冷やすことはできませんし、コストがかかってしまいます。
どのくらい冷やすの?
冷却時間は10分から20分を1セットとし、1時間ほど空けて冷却を繰り返します。
アイシング開始時は「冷たくて患部の痛みに心地良さを感じる」と思います。
しばらくすると冷やしている部分が「じんじんしてくる感じで氷を払いのけたくなる」ようになります。
その後も冷やし続けると「何も感じなくなる」状態までたどり着きます。
この「何も感じなくなる」状態まで冷やすと大体20分くらいかかります。
注意が必要なのが、凍傷です。
直に皮膚に氷を当てておくと、逆に皮膚へダメージが与えられるので気を付けましょう。
必要に応じて、タオルの上から冷却します。
Compression(圧迫)
患部の腫れがある部分を包帯や布でで巻きます。
特に圧迫だけを行うことはあまりなく、上記のアイシングと一緒に行われることが多いです。
一緒に行う場合、アイスパックや氷嚢を患部に当て、その上から包帯やアイシングラップで軽く巻きます。
確かに患部が動かないよう固定させる意味もありますが、強く巻きすぎると血流が悪くなったり神経を圧迫してしまい、痺れなどが生じる場合があります。
適切な具合で巻きましょう。
Elevation(高挙)
「高挙」や「挙上」などという言葉で、なかなかイメージしにくい人が多いかと思います。
「Elevation」とは「エレベーター」という言葉と似ているように「持ち上げる」「上に挙げる」という意味です。
人間は重力の関係で血液が下の方に溜まりやすくなります。
損傷した部分は毛細血管などが破壊されているため、正常な血流ができなくなっており、そのまま放置していると血液が滞留したり老廃物が流れなかったりして腫れの原因となります。
そのため、横になってケガをした部位を心臓より高い位置に置くことで、血液循環を助けます。
例えば足首を捻挫した場合は横になり、足首の下に枕などをおいて高くしてあげましょう。
このような処置をすることで、痛みが和らぐこともあります。
まとめ:最低でもRestとIceまで行う
応急処置にはケガの悪化を防ぐだけでなく、早期回復を促すという効果もあります。
ケガの状態にもよりますが、軽度の捻挫や肉離れ、筋肉の違和感があった場合にはRestとIceまでは実践しましょう。
特に「痛みはないけど、違和感がある」程度でもしっかり対応することで、その後の回復に大きく関わってきます。
一時の処置が他人を救うこともあるかもしれません。
ぜひ基本的な処置なので覚えておきたいものですね。