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「調律師のるみ子さん」電車事故は福知山線脱線事故がモデル?

いしいしんじさん作の「調律師のるみ子さん」。

『雪屋のロッスさん』という単行本に収録されている作品です。

 

「調律師のるみ子さん」の中には、電車の事故があったという描写があります。

ホントにわずか、過去に電車の事故がありましたよ~程度ですが。

 

ぴよすけが本作品を初めて読んだとき、電車の転覆事故=福知山線脱線事故を思い浮かべました。

 

この記事では電車転覆事故が福知山線脱線事故をモチーフにしているのか調べてみました。

 

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作中での事故の扱い

作中での事故の扱い

「調律師のるみ子さん」の中に次のような一節が出てきます。

あの転覆した電車の中で、見ず知らずのあなたに助けていただいて、まだ小学生だった私は、ろくにお礼も言えませんでした。お怪我は大丈夫だったでしょうか。私のやけどはその後なんとか安定し、今年の春、調理師の免状をいただくことができました。

出典:「調律師のるみ子さん」

事故がきっかけで、主人公のるみ子さんは右手の人さし指と中指を失っています。

指の喪失により、るみ子さんが狡猾で陰キャになっていくんですね…

 

つまり、人生が変わるほどの事故だったということでもあるわけです。

 

 

JR福知山線脱線事故は後述しますが、多くの方が亡くなられたJR発足後の最悪の事故でした。

命が助かった方でも後遺障害が残ったり、手足を失わられた方もいらっしゃいます。

 

またこの事故は4月に起きているということで、新たな門出を迎えた多くの新社会人や学生たちも被害に遭っています。

 

これから始まる新生活が事故によって大きく変わってしまったということでは、「調律師のるみ子さん」の電車事故との関連性がみてとれます。

 

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作品発表と事故日時の比較

実際に作品発表の時期と事故日時を比較してみました。

JR福知山線脱線事故2005年 4月25日
作品発表2006年 新潮文庫より出版

 

事故が発生してから「調律師のるみ子さん」が収録されている『雪屋のロッスさん』が出版されています。

時系列から考えると福知山線脱線事故をモチーフにして作品を描くことができます。

 

ちなみにそれ以前の電車転覆事故も複数ありましたが、大々的に後々まで報じられている事故というのは福知山線脱線事故くらいでしょうか。

 

JR福知山線脱線事故との比較

JR福知山線脱線事故との比較

そもそも福知山線脱線事故の被害はどのようなものだったか、Wikipediaより引用しました。

直接的な事故の犠牲者は死者107名(当該列車の運転士含む)、負傷者562名を出す、交通機関の事故としては歴史に残る大惨事となった。犠牲者の多くは1両目か2両目の乗客で、多くは脱線衝突の衝撃で車体が圧壊し内装部材や車体に押し潰されたことによる頭部や胸腹腔内損傷、胸腹部圧迫による窒息死(圧死)、頚椎損傷、骨盤骨折による失血死やクラッシュ症候群(クラッシュシンドローム)などであった。同じ車両から救出された生存者であってもクラッシュ症候群により手足切断など後遺障害を伴う重傷者が複数人確認されている。

出典:Wikipedia

 

JR福知山線脱線事故は15年も前ということで、ぴよすけもあまり具体的に覚えているわけではありませんが…

かなりの事故だったということを記憶しています。

 

るみ子さんの指が失われたように、現実世界で多くの方が犠牲になったり後遺障害に悩まされたりしています。

 

 

作中の気になった点として、るみ子さんが助けた小学生はやけどを負っていたということです。

 

ぴよすけも当時のことを思い返しても火災が発生したという記憶はありません

Wikipediaによると、ガソリンが漏れ、引火の可能性があったということは載っていました。

駐車場周辺において電車と衝突して大破した車からガソリン漏れが確認されており、引火を避け被害者の安全を確保するためにバーナーや火花が散る電動カッターを用いることができず、救助作業は難航した。

出典:Wikipedia

 

なんらかの影響でやけどを負った人もいたか、もしくは小説なので脚色しているのかもしれませんね。

 

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結論

JR福知山線脱線事故をモチーフに小説を執筆した可能性はあります。

作者のいしいしんじさんは大阪府大阪市出身の作家さんで、地元関西で起きた事故に影響を受けたことが考えられます。

 

作中では10年前ということになっていますが、るみ子さんの苦悩を描く作品であるため、あえて過去にあったという設定にしたのかもしれません。

 

 

なぜ小説の題材としたのか、定かではありませんが…理由の一つとして事故の風化を防ぎたいという思いもあるのかもしれません。

 

現在、ぴよすけ調べでは「調律師のるみ子さん」は某教科書に教材文章として採用されています。

この文章を見た人(もしくは教える先生)が「これって…福知山線脱線事故のこと?」と考えるだけで風化は防げます。

 

執筆当時はここまで考えていなかったかもしれませんが、悲惨な事故を風化させないという意識はあったのかもしれませんね。

 

この作品と同じように、福知山線脱線事故で被害に遭われた方の中には今も後遺症に苦しんでいらっしゃる方もいます。

事故によって日常が大きく変わってしまうということを教えてくれる作品でもあります。

 

「調律師のるみ子さん」のあらすじ・解説記事はこちらからどうぞ。

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\「調律師のるみ子さん」以外にも面白い作品がたくさんありますよ!/

「なぞタクシーのヤリ・ヘンムレン」「調律師のるみ子さん」「犬散歩のドギーさん」「見張り番のミトゥ」……この世のふしぎがつまった31の小さな物語集。

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